このページは、患者の皆様やご家族の方々に、ハイゼントラについての正しい理解と、重大な副作用の早期からの発見に役立てていただくために作成されました。ハイゼントラの使用による副作用が生じたと考えられる場合には、ただちに医師または薬剤師にご連絡ください。
このお薬は、血漿分画製剤のうち、人免疫グロブリン製剤と呼ばれるグループに属する注射薬です。
販売名 | ハイゼントラ20% 皮下注1g/5mL | ハイゼントラ20% 皮下注2g/10mL | ハイゼントラ20% 皮下注4g/20mL |
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性状 | 外観は淡黄色又は淡褐色の澄明な液剤。保管中にわずかな混濁や少量の粒子が認められる場合がある。 | ||
形状 | キャップの色は赤色 | キャップの色は赤色 | キャップの色は赤色 |
お薬には規格が3種類あります。 |
ハイゼントラは、無又は低ガンマグロブリン血症の方に処方されます。不足している抗体(免疫グロブリン)を補うことにより、細菌やウイルスから体を守ろうとする免疫系の働きを高めます。
製造時には、感染症(かんせんしょう)の発生を防止するための安全対策を行っています。しかし、人の血液を原料としており、血液中に既に存在するウイルスなどに対する不活化処理などには限界があるため、この薬を使うことによって感染症が発症する危険性を完全に排除できません。
治療にあたって患者さんとそのご家族は、この薬の必要性と感染症の危険性について十分に理解できるまで医師から説明を受けるようにしてください。
もしも、以下の症状に気づいたら、医師などに相談しましょう。
部位 | 自覚症状 |
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全身 | からだがだるい、ふらつき、発熱、からだのむくみ、疲れやすい |
顔面 | 考えがまとまらない、意識の低下、頭痛 |
眼 | 眼と口唇のまわりのはれ、白目が黄色くなる、眼がはれぼったい |
口や喉 | 眼と口唇のまわりのはれ、しゃがれ声、吐き気、嘔吐、血を吐く、歯ぐきの出血 |
胸部 | 息切れ、息苦しい、動悸(どうき)、胸の痛み、胸をしめつけられる感じ、 胸を強く押さえつけた感じ、横になるより座っている時に呼吸が楽になる、吐き気 |
腹部 | 吐き気、激しい腹痛、腹がはる、食欲不振 |
手・足 | 足の激しい痛み |
皮膚 | じんましん、かゆみ、皮膚が黄色くなる、あおあざができる、皮下出血 |
尿 | 尿が黄色い、尿が褐色になる、尿がでない、尿量が減る |
その他 | 判断力の低下、出血、知覚のまひ、出血が止まりにくい |
こんな経験のある人には使うことが出来ません
次の人は、使用する前に医師または薬剤師に相談が必要です。
1回の使用量や投与方法などは、症状や体重などにあわせて、医師が決めます。
ハイゼントラは原則として体重1kgあたり50~200mgを週1回または体重1 k g あたり1 0 0~4 0 0 m gを2 週に1回投与します。
注射部位1か所あたり50mLを超えない量で医師が決めますが、治療を受ける疾患や症状により適宜増減することがあります。必ず医師から指示された投与方法に従ってください。
病院で適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんまたはご家族の方は、ハイゼントラをご自宅で自己注射できます。自己判断で使用を中止したり、量を加減したりせず、医師の指示に従ってください。
ハイゼントラでは注射に適した部位、使用量、投与速度があります。
注射に適した部位
お腹、太もも、腕、腰まわりが注射部位に適しているとされています。その際に腕の内側・脇の下への注射は避けてください。どの注射部位が自分に適しているかは、主治医から指導を受けてください。複数の箇所に注射する場合は、少なくとも5cm離して使用してください。
使用量・投与速度
1回の使用量や投与方法などは、症状や体重などにあわせて、医師が決めます。
投与は速度が調節できる注射器具(シリンジポンプなど)を用いて医師に指示された速度で注射します。
記録は大切
ハイゼントラ20%皮下注を使用した場合、箱に記載のある製造番号を、患者日誌の所定の場所に記入してください。
作業の目安時間(例)
2~3 時間
作業の目安時間(例)
30分 ~ 1時間
※作業の目安時間は翼状針1本を使用した場合の目安です。
箱に入れたまま平らな場所に置き、室温になるまで待ちます。
冷蔵庫保存の場合は注入に必要な薬を少なくとも注入開始時間の2~3時間前に取り出してください。
薬の温度が低いまま注入すると、ねばり気がまし、ポンプがつまりやすくなります。
必ず室温になっていることを確認してから使ってください。
注入には約30分から1時間かかりますので、トイレは事前に済ませておきましょう。
カウンターやテーブルなど、作業しやすい場所を選んでください。
始める前に薬の注入に関係のない物は片づけてください。
作業する場所の条件
作業する場所を、消毒用アルコール綿で中心から外側に向かって円を描くように、きれいに拭いてください。
落としたり、シリンジの準備や針の刺入に失敗してやり直すため、手順を再度行わなければならなくなった場合には、必ず予備を使用してください。
※1日2回以上投与する場合は、注入セットを必要数用意してください。
抗菌石鹸、または主治医や医療機関のスタッフがすすめる洗浄剤を使って手をきれいに洗います。
指と指の間、爪のまわり、手首まで念入りに洗ってください。
バイアルのチェックポイントを確認します。
一つでも異常があった場合や心配なことがあるときは、手順を中止し、主治医に連絡してください。
【1】バイアルが室温になっていることを確かめた上で(≫ステップ1参照)、今回の注入に使うバイアルの保護キャップを外します。
【2】バイアルのストッパー上部を、消毒用アルコール綿で丁寧に拭き、完全に乾くまでそのまま放置してください。
バイアルのゴム栓部分、ツートック®のシリンジとの接続部、フィルター部、内側の針には直接触らないでください。
【3】ツートック®をバイアルに取りつけます。
【4】ツートック®にシリンジを取りつけてください。
【5】バイアルをまっすぐ逆さにします。内筒(ピストンのように動く内側の部分)をゆっくりと引いて、バイアル中の合計注入量※をシリンジに抜き取ります。この際、泡が見られます。
※合計注入量:投与量にプライミング(≫ステップ7)の量を加えた量。合計注入量は、My Diary(患者日誌)を確認してください。
内筒はゆっくりと引き、急には引かないでください。
【6】注入量の薬を移したら、シリンジを上に戻し、ツートック®からシリンジを取り外してください。
薬が入って使える状態にしたシリンジは、お子さんなどの手の届かない安全で清潔な場所に置いてください。
【7】廃棄の際、ツートック®はバイアルから取り外し、廃棄ボックスに捨てます。
プライミングとは?
チューブから空気を抜き、針先まで薬液で満たす作業のことをいいます。
【1】薬を入れたシリンジに翼状針を取りつけます。
【2】薬を入れたシリンジに翼状針を取りつけたら、シリンジの内筒をゆっくり押して、チューブから針先まで薬を満たしてください。
プライミングとは?
チューブから空気を抜き、針先まで薬液で満たす作業のことをいいます。
【1】Y字チューブに翼状針を取りつけ、薬を入れたシリンジに取りつけます。
【2】薬を入れたシリンジにY字チューブを取りつけたら、シリンジの内筒をゆっくり押して、チューブから針先までを薬で満たしてください。
消毒用アルコール綿で注射部位を消毒してください。
部位の中心から円を描くように外側に向かって拭いて消毒し、完全に乾かしてください。
注射部位は、週1回の注射ごとに変更し、これまでの投与でトラブルがあった部位(赤くなったり、腫れたなど)を避けてください。
針を刺入するときの痛みの緩和に、外用局所麻酔剤等を使用することができます。
詳しくは主治医にお尋ねください。
【1】翼状針の翼の隆起部を持ち、トレイを外します。
【2】隆起部を持ったまま針についているキャップを外します。
【3】皮膚をつまみ、皮膚に対して90°の角度で翼状針を一気に刺してください。
【4】皮下へ針を刺入できたら、翼状針のうえからサージカルテープを斜めに交差するように貼りつけて翼状針がずれないように固定してください。
【5】シリンジの内筒をゆっくりと引いて、チューブへ血液の逆流がないか確認してください。
【6】チューブをたるませた状態にし、サージカルテープで体のどこか1箇所に固定してください。
注入の途中で針が抜けないよう丁寧に固定してください。
※Y字チューブを使用し2箇所へ投与する場合は、左右の腹部、または左右の太ももに投与します。
※複数箇所に分けて注入する方は、主治医の指導に従って行ってください。
【1】翼状針の網目のあるほうを持ち、針についているキャップを外します。
【2】皮膚をつまみ、45°から90°の角度を目安に翼状針を一気に刺してください。針の注射角度については、主治医の指示に従ってください。
【3】皮下へ針を刺入できたら、翼状針の下に脱脂綿または滅菌ガーゼを敷き(図A)、そのうえからサージカルテープを斜めに交差するように貼りつけて翼状針と脱脂綿または滅菌ガーゼがずれないように固定してください(図B)。
【4】シリンジの内筒をゆっくりと引いて、チューブへ血液の逆流がないか確認してください。
【5】チューブをたるませた状態にし、サージカルテープで体のどこか1箇所に固定してください。
注入の途中で針が抜けないよう丁寧に固定してください。
※Y字チューブを使用し2箇所へ投与する場合は、左右の腹部、または左右の太ももに投与します。
※複数箇所に分けて注入する方は、主治医の指導に従って行ってください。
シリンジポンプのセットと薬の注入については、別冊のシリンジポンプ説明書をご覧ください。
【1】シリンジポンプ停止後10秒ほど時間をおいて、サージカルテープを注射部位から外し、翼状針をゆっくりと抜きます。
【2】注射部位から出血がないことを確かめた後、ばんそうこうで保護します。軽い出血があるときは、出血が止まるまで消毒用アルコール綿でおさえてください。
翼状針をシリンジからゆっくりと外し、キャップをつけずに廃棄ボックスに入れます。
※Y字チューブを使用した場合は、Y字チューブと翼状針をまとめて廃棄してください。
新しい注入セットで≫ステップ6(シリンジの準備)からもう一度行ってください。
2回目以降はすでに注入を行った部位から5cm以上離れた場所に注射してください。
注入に使用した物は、次のように片づけてください。
注入セットの再利用はできません。
廃棄容器(廃棄ボックス、ビニール袋)に入れた物は「医療用廃棄物」です。
家庭ゴミとしては処理できません。
かかりつけの医療機関に持っていってください。
※医療機関や自治体により廃棄方法が異なる場合があります。
【1】使用したバイアルに記載の製造番号を、患者日誌の所定の場所に記入してください。
詳しい記入方法は、患者日誌をご覧ください。
【2】患者日誌に注入の記録をつけてください。
記入方法や記入する項目は、患者日誌をご覧ください。