監修
国立病院機構大阪医療センター 感染症内科 西田 恭治 先生A. 年齢とともに、生活習慣病への注意が必要です。特に、脳出血を引き起こす要因となる高血圧症には気をつけましょう。
血友病患者さんも40歳を超えれば「生活習慣病世代」。高血圧症、糖尿病、脂質異常症による動脈硬化性疾患の予防についても考えていかなければいけません。血友病患者さんに起こりやすく、脳出血などの重大な出血につながる可能性のある血圧管理は、血友病ではない同年代の男性以上に気を配る必要があります。
脳血管疾患
頭蓋内出血は、血が止まりにくい血友病患者さんにとって最も注意すべき合併症で、高血圧症、動脈硬化症、HIV/HCV 感染症などが脳出血の発症率を上昇させると言われています。また、脳梗塞は心血管疾患と同様で今後増加する可能性があります。
予防のポイント
高血圧症予防のためにも、家庭での血圧測定を行いましょう。もし強い頭痛や手足の動きにくさ、しゃべりにくいなどの症状を認めたときは、速やかに医療機関へ連絡しましょう。
発症した際は、早期の治療開始が重要です。
高血圧症・糖尿病・脂質異常症
血友病患者さんには高血圧症の合併が多いことが報告されています。
糖尿病は一般成人男性と同等~多く、脂質異常症も多いという報告があります。
予防のポイント
塩分量、食事の内容と量に気を配り、適度な運動を行いましょう。また、喫煙や過食はリスクとなるため、禁煙、食べすぎないことを心掛けましょう。
STUDY NOTE
命にかかわる出血~頭蓋内出血~
中等症および軽症の血友病でも、重大出血の場合に命にかかわる危険性は重症血友病と変わりません。
血友病関連出血の中で最も死亡率が高いのは頭蓋内出血です。海外の研究では、50歳以上の血友病患者では頭蓋内出血で30%の死亡率が報告されており、その頭蓋内出血の大半が非外傷性(高血圧症や動脈硬化などによる出血)とされています*。
*Darby SC et al. J Thromb Haemost. 2004. 2(7):1047-1054
英国において、一定の期間で亡くなられた患者さんの重症度別比較
- 調査概要
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- ●方法:1977〜1998年に英国血友病センターのデータベースに登録された血友病AまたはBの患者さん6018人
- ●対象:HIVに感染していない血友病AまたはBの患者さんの2000年1月1日時点の死亡率を重症度別に解析
- Darby SC et al. Blood. 2007. 110(3):815-825より作成
血友病患者さんの死亡原因
血友病以外の疾患で受診する際に注意すること
血友病のことを知ってくれているかかりつけ医が身近にいると、風邪などの感染症治療や予防接種、健康診断なども安心して受けられます。
初めての医療機関を受診する場合や、外科手術、歯科治療など出血が予想される手術・処置を受ける場合は、補充療法の必要性や受診する医療機関に伝えるべき項目について、主治医に必ず確認してください。
がん検診など内視鏡検査を受けるときも、事前に検査内容を確認し、主治医へ相談しておきましょう。
緊急時連絡用に患者カードを携帯しておきましょう
事故や災害に遭ったときにご家族が近くにいない場合、血友病であり、凝固因子製剤が必要なことを救急隊に伝える必要があります。
緊急時連絡用に必要事項を記入してた患者カードや手帳を携帯しておきましょう。
記入しておくこと
- 名前と住所
- 血友病のタイプと重症度
- どのタイプの因子/製剤を使用しているか
- アレルギーの有無
- 主治医の連絡先(住所と電話番号)