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ライフステージに応じた⾎友病のつきあい⽅家庭療法を始めよう

監修

聖マリアンナ医科大学 小児科学 講師 長江千愛先生

わが子に針を刺すなんて・・・。それでも家庭療法を始めて欲しいのは、メリットがとても大きいからです。

本来は病院で行うべき注射を、在宅で、ご家族またはお子さん本人が行うのが家庭療法。お母さんやお父さんが自分の子どもに注射をするのは、かなりの勇気と覚悟が必要です。それでも、幼稚園、小学校に通うようになって、定期補充療法を行うにも頻繁に病院に通うことが難しくなり、一方で日々の活動量が増えて出血リスクも大きくなる時期だからこそ、家庭療法をお勧めします。

家庭療法を安全に行うための確認事項

家庭療法の目的・意義

  1. 出血時の早期補充療法あるいは定期補充療法を医療施設以外で効率よく行うことにより、出血の苦痛を予防・軽減させる
  2. 出血による後遺症および慢性障害の発生を予防・軽減させる
  3. 出血時に通院する際の身体的、時間的、経済的負担を減らす
  4. 出血に伴う学校生活や社会生活の質の低下を軽減させる
  5. 活動内容や行動範囲を広げ、社会適応をはかり、心身両面での自立を促す

患者や家族の遵守事項

  1. 定期的(最低3ヵ月ごと)に受診すること
  2. 家庭治療に関して担当医・医療スタッフの評価と指導を受けること
  3. 治療経過や製剤の家庭内在庫状況を記録し、病院に定期的に提出すること
  4. 製剤は規定の方法で管理し、勧められた輸注量、輸注方法を守ること
  5. 製剤は、兄弟を含む患者の間で流用しないこと
  6. 針や注射器などの医療廃棄物を適切に処理すること
  7. 出血症状が強いときや判断に迷うときには担当医・医療スタッフに連絡すること

家庭療法の適応基準

  1. 本療法を患者ならびに家族が望んでいる
  2. 本療法の目的、意義、遵守事項を患者と家族が十分に理解している
  3. 本療法が患者の身体的、精神的苦痛を軽減し、生活の質を高めることが予想される
  4. 担当医・医療スタッフと患者や家族との間に安定した信頼関係が築かれている
  5. 患者や家族が心理的に安定している
  6. 患者は当該製剤による重篤な副作用の既往がない

多くの決まりごとがありますが、家庭療法を安全に行うための約束ごとです。しっかりと守るようにしましょう。

出典)日本血栓止血学会「インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年改訂版」(2013)

家庭療法を行うメリット

通院の回数が減る

通院の回数が減る

輸注スケジュールを柔軟に決められる

輸注スケジュールを柔軟に決められる

出血したとき、すぐに補充療法を行うことができる

出血したとき、すぐに補充療法を行うことができる

体育の授業がある日、遠足や運動会の当日(製剤によっては前日)に予備的補充療法がしやすい

体育の授業がある日、遠足や運動会の当日(製剤によっては前日)に予備的補充療法がしやすい

注射がうまくいかないとき

注射できない!

かかりつけ医に助けてもらう

家庭療法を始めるときに協力をお願いしておくと安心です。

子供が泣いて暴れる!血管にうまく針が刺さらない!

訪問看護サービスを利用する

注射を代わってもらうだけでなく、お母さん、お父さんの不安を和らげるサポートを依頼することができます。

  • 注射の準備や介助
  • 手技の確認
  • 健康チェック
  • 日常生活の工夫の指導など
注射の準備や介助
日常生活の工夫の指導

スランプで悩んでいる

  • 主治医や看護師に相談!今一度、注射のやり方を確認してもらう
  • しばらくの間、通院で補充したり注射の回数を減らしたりするなどの対策を一緒に考えてもらう
  • 患者会やサマーキャンプに参加して先輩に相談する
  • お母さんやお父さんがひとりで頑張らず、おじいちゃんやおばあちゃんなどほかの家族にも協力してもらう
うまくできていたのに!失敗が続いて子どもが嫌がり始めた

Next stageを見据えて

自己注射に挑戦お子さんが小学校5年生ごろ(10歳前後)になると、宿泊行事への参加などをきっかけに、自己注射に挑戦するようになります。自己注射がうまくできないとき、親は「注射の先輩」としてアドバイスができるかもしれません。時には、「お母さん(お父さん)にしてもらうより、自分で注射するほうが痛くないや!」と言われてしまうかもしれませんね。それも、お子さんが自己注射を受け入れるためのよいコミュニケーションになるでしょう。