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ライフステージに応じた⾎友病のつきあい⽅スポーツを始めよう

監修

聖マリアンナ医科大学 小児科学 講師 長江千愛先生

「スポーツをしたい!」が自己注射のモチベーションに。やりたいことを実現するために必要な定期補充療法。

血友病のお子さんには定期的な運動は大切です。運動を通して筋力を強め、それによって関節を保護して出血を減らすことができます。クラブの先輩や指導者から正しいトレーニング法を教わるというメリットもあります。準備運動と整理運動、ストレッチや筋トレに関する正しい知識と技術は、けがや関節内出血を防ぐために非常に重要です。スポーツに限らず、身体を使う仕事に就く際にも大いに役立つでしょう。

目標をもってスポーツに取り組むことで、定期補充療法を実践することへのモチベーションも高まります。主治医とともに、本人がやりたいスポーツと、そのスポーツの利点とリスクについてじっくり話し合った上で、お子さんの挑戦を応援してあげてください。

スポーツ種目別の活動強度と出血リスク

スポーツ種目別の活動強度と出血リスクの表

参考)National Hemophilia Foundation(NHF):Playing it Safe Bleeding Disorders, Sports and Exercise(2017)

スポーツを行う際の注意

  • 接触や衝撃が多く、誰にとっても危険のあるスポーツ(活動強度3)は、避けるようにしましょう。
  • 活動強度が低くても、頭部を強打する可能性のあるスポーツやプレーには留意する必要があります。
  • 十分な準備をせずに行ったり、無理な運動を行うと、けがや関節内出血を生じる危険があるので、注意を守って行ってください。

関節や筋肉に痛みや違和感があったら、我慢しない。やりたいことを長く続けるために休むということを話し合いましょう。

小学校高学年になると、関節や筋肉の痛みや違和感など出血の自覚症状に自分自身で気づき、応急処置や補充療法などの適切な対処を行うことができます。とはいえ、親の言うことを聞きたくない、無茶をしたくなるといった年齢でもあるので、油断は禁物です。大事な試合の途中などに痛みや出血があった場合、記録やチームのことを考えるとそのまま頑張りたくなりますが、そこは長く続けるために「休む勇気」が必要であることを普段から話し合っておいてください。小学校高学年から中学生は反抗期の時期です。親から心配されるのを嫌って、何かあっても隠すということもあるかもしれません。でも、血友病に関することは隠さずに話す必要性を幼いころから伝えてあげてください。

スポーツのメリット

  • バランス感覚が養われて、転びにくくなる
  • 肥満による関節への過度な負担を、減量効果で防ぐことができる
  • 達成感や自信を得ることができ、自尊心を育てる
  • 友だちづくり、人間関係、精神力、社会性、礼儀など、人格形成において大切なものを学ぶ素晴らしい機会になる

スポーツをするときの注意

  • スポーツをするときは、まず主治医の先生によく相談する
  • 準備運動やストレッチを必ず行う
  • ヘルメット、ひざあて、ひじあて、サポーターなど、身体を保護するものをつける
  • 体調の悪いとき、足首や関節に出血を繰り返しているときは無理をしない
  • 足首や関節に違和感を感じたときは、たとえ大事な試合の途中でも、休むようにする
  • スポーツをする場所に石や木、とがったものなど、けがや出血の原因になるようなものがあれば取り除いておく

Next stageを見据えて

サッカーをする少年高校生や大学生、その先の人生を考えると、いつまでも親が子どもの健康を管理できるわけではありません。周囲がどれだけ注意をしても、結局は自分で「やりたいことをやるためには定期補充療法が必要」と気づかなければ治療を続けることはできません。けがや出血を心配して、スポーツに打ち込む情熱を制限するのは逆効果なのです。

「うるさく言われたくない」という思いから、痛みや不調を隠したり、練習内容を話さなくなったりすることもあります。「やりたいスポーツを続けたいから」という気持ちは、自己注射や健康管理へのモチベーションとなります。そして、やりたいことができた達成感は、お子さんにとって将来の大きな自信につながるでしょう。親としては心配ですが、お子さんを信じて見守っていただけたらと思います。