監修
兵庫医科大学病院 血液内科 德川 多津子 先生関節の評価もエイジングケアには欠かせません。適切な補充療法で、エクササイズも安心して行えます。
これまで出血時補充療法で止血管理をしてきた方であれば、過去の関節内出血に対する経験から、関節に痛みがあれば出血症状だと判断して血液凝固因子製剤を注射するはずです。しかし、それは本当に「出血が原因の痛み」でしょうか?
年齢が高くなれば、血友病でなくても関節の痛みを感じるようになります。出血を繰り返した関節であればなおさら、関節症が進行して関節軟骨の破壊や変形によって出血していなくても痛みが出ることがあります。その場合、いくら血液凝固因子製剤の輸注量を増やして安静にしていても、関節の痛みを取り去ることはできません。
関節の状態は変化していきます。そして、痛みの原因も変化していきます。「血友病だから関節が痛くなるのは当たり前」と放置しておかず、定期チェックを受け、主治医・整形外科医へ相談するようにしましょう。また、筋力強化は関節機能をサポートします。関節症が進行しているからこそ、エクササイズを行ってみましょう。
出血がなくても、関節の定期チェックを
関節障害は自覚症状がない出血で進行していることもあります。血友病性関節症を早期発見するためには、定期的に関節の状態をチェックしておくことが大切です。出血したことがない関節でも動きが悪くなったり、痛みを感じるときには、主治医や整形外科医に相談してみてください。
エクササイズで筋力をつける
エクササイズは簡単なものであっても継続的に行うことで、関節機能の維持・改善や筋力を強化することができ、さらには身体面だけでなく精神面へも好影響をもたらすことが期待できます。
しかし、少年・青年時代に運動を禁止・制限された経験がある方は、エクササイズを勧められても出血への恐怖心やできるのかどうかという疑問を持つかもしれません。血液凝固因子製剤が進歩した今、適切な補充療法によって血友病患者さんもより安全に運動ができるようになりました。
もちろん、いきなり無理な運動や激しいスポーツを始めるのは危険です。自分に合った運動やエクササイズ、そしてそれに必要な補充療法(輸注量や注射タイミング)をまずは主治医と相談するようにしましょう。
家庭でできるエクササイズ
協力:兵庫医科大学病院 リハビリテーション部 理学療法士 梶原 和久 先生
まずは1セット10回ずつから始めてみましょう。慣れてきたら、1セット10回を朝昼晩に行ったり、1セットを20回に増やしていきます。
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膝のばし足あげ運動
- あおむけになり、運動をしない方の膝を立てます
- 反対の足の膝を伸ばしたままで、立てた膝と同じ高さになるまで上げ、ゆっくりと下ろします
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ブリッジ
- あおむけに寝て、両膝を立てます
- おしりに力を入れ、床からおしりが浮くようにゆっくりと持ち上げ、3秒キープして戻します
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スクワット
- 足を肩幅に開き、ゆっくりと膝を曲げて腰を落としていき、またゆっくり立ち上がります
- このとき、股関節、膝、足首が曲がっていることがポイントです
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足を踏み出す運動
- 肩幅に足を開き、運動したい方の足を前に踏み出し、前に出した方の足に体重を乗せます
- このとき、背筋はできるだけ伸ばします
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腕の曲げのばし運動
水の入ったペットボトルなどを持ち、図のようにゆっくりと肘を曲げ、ゆっくりと元に戻します
痛みを生じない、無理のない範囲で筋力強化や関節可動域の訓練を行うことが大切です。
運動に不慣れだったり関節症が進行している方は、まずは注射した日に行ってみるようにしてください。
また、もし運動中に違和感があらわれた場合は、無理せず中止しましょう。
そして、運動したあとは、足首・膝・股関節などが熱くなっていたり腫れがないか、痛みがないかをセルフチェックしましょう。もし出血を疑う場合は注射を、関節や筋肉に熱感があれば冷やして安静にしてください。それでも改善しない場合は、早めに主治医へ相談するようにしましょう。