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ライフステージに応じた⾎友病のつきあい⽅血友病治療について再確認

監修

名古屋大学医学部附属病院 輸血部 鈴木 伸明 先生

あなたが定期補充療法を行う意味は何ですか?自分自身が納得した上で、病気と向き合っていきましょう。

子どもの頃から定期補充療法を行っている人であれば、血友病治療の目的は『出血と関節症を予防するため』と答えるかもしれません。しかし、補充療法に対する思いは人それぞれ違います。「血友病でない人と変わらない生活を送りたい」「出血するかも…という不安なく生活したい」、あるいは「定期補充療法を実施しているから自分は大丈夫なんだと周りの人を安心させてあげたい」という人もいるかもしれません。血友病とは、生涯つき合っていかなければいけません。主治医や両親にやりなさいと言われたから、という理由ではなく、あなた自身の定期補充療法を行う意味を考えてみませんか?

血友病と向き合うために

知識や手技を見直しながら、あなた自身の気持ちを整理してみましょう。

気持ちを整理する6つの項目

振り返ってみて、わからないことやもやもやしていることがあれば、まずは主治医に質問してみてはどうでしょうか。

30歳を過ぎると、関節障害を自覚する患者さんが急激に増加します。

関節内出血が1度もないのに血友病性関節症になることはありません。しかし、出血が起こっていたのに、その自覚症状もなく経過して関節症になることは考えられます。忘れてはいけないのは、定期補充療法の目的は、自覚症状のない出血を含め、あらゆる関節内出血を防ぎ、関節症の発症を生涯にわたって防ぐということなのです。

各年齢における関節機能障害率

日本の血友病患者さんでは、30歳代以降に、肘、膝、足の関節の機能障害を自覚し、急激にQOLが低下することが報告されています。これは、30歳代以降の方の世代では、まだ定期補充療法が広く行われていなかったこと、また年齢とともに関節の障害が増えていくためと考えられています。

各年齢における関節機能障害率のグラフ
調査概要
  • 調査方法:患者または家族に対するアンケート方式
  • 回答者数:831人
  • 回答者の属性:患者本人546人(65.7%)、保護者270人(32.5%)、配偶者・兄弟など15人(1.8%)
  • 疾患の種類:血友病A653人(76.6%)、血友病B129人(15.5%)、その他の凝固異常症41人、病名不明 /未回答が8人

出典)瀧正志ほか:厚生労働科学研究所事業「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」分担研究「血液凝固異常症のQOLに関する研究」平成19年度調査報告書, 2008, p.13, 図10-3(一部改変)

人生の節目には、関節の状態をチェック

レントゲン画像のイメージ 近年、定期補充療法の普及により、出血経験も関節障害もなく、整形外科を受診する機会がないまま成人を迎える方も少なくありません。しかし、安心はできません。1~2回の出血でも関節障害が起こったという報告もあります。出血による関節の変化に早く気づくための最も簡単な方法は、出血前の画像との比較です。そのためには、あらかじめ整形外科を受診して定期的に関節の状態をチェックしておくことが大事です。自分の誕生日、就職、結婚などの人生の節目には、ぜひ画像検査による関節の状態のチェックを行ってみてくださいね。