監修
名古屋大学医学部附属病院 輸血部 鈴木 伸明 先生仕事も結婚も、病気のためにあきらめることはありません。
学校を卒業すれば、いよいよ社会生活がスタートします。昔は血友病であることが仕事や結婚の制約になっていましたが、治療法が大きく進歩した今では、患者さんの多くはあらゆる職業についていますし、素敵なパートナーに出会って結婚されている人もいます。人にはそれぞれ個性があるように、病気もひとつの個性です。これまで血友病とともに生きてきたことは、あなたの人間的な魅力につながっているはずです。ネガティブにばかり捉えず、あなたの個性(魅力)に変えていけるといいですね。
就職・仕事について
職業選択に迷ったときは
最も大切なことは、「あなたが何をしたいか」です。その上で、その仕事が血友病である自分に可能かどうかを考えましょう。定期補充療法や予備的補充療法を活用すれば、進行した重度の関節症がある場合やけがの危険性が高い仕事でない限り、さまざまな仕事に就くことができます。
採用面接のときに病気のことを伝えるかどうか
病名を言わずに就職活動を行うことは可能です。就職活動で人事担当者が最も知りたいことは、病歴ではなく、あなたに職務をこなせる能力があるかどうかです。出血回数が多かったり関節症状などで、職務の一部がこなせない可能性がある場合は、事前に採用者に告げておいたほうがいいでしょう。希望する仕事に就くためにも、日ごろから止血管理をしっかりと行って健康状態を良好に保っておくことが大切です。
就職が決まったら
就職直後は生活環境が変わったり、何かと忙しく、健康管理がおろそかになりがちです。就職したからには出血で仕事を長く休むことのないように、体調管理・止血管理を今まで以上にしっかりしておきましょう。入社後すぐに健康保険が交付されない場合もありますので、主治医に相談して就職前に2~3ヵ月分ほどの製剤をストックしておくといいですね。
恋愛・結婚について
恋人や結婚相手と、その家族への説明
つき合い始めてすぐに告白した人、プロポーズする段階で伝えた人、パートナーが先に気づいて問い詰められた人、さまざまな伝え方があるようです。タイミングは人それぞれですが、正しく伝わるように整理して、資料を準備しておくとよいですね。パートナーにとっては、自分の結婚相手の病気について詳しく知りたいのは当然です。なぜなら、これからともに生きていくあなたの健康管理や心の支えになりたいからです。主治医からもパートナーに説明してもらうことで、安心できるかもしれません。
自分の子どもにどう説明するか。血友病の遺伝について知っておきましょう。
あなた自身の病状と補充療法や日々の管理について、あなたのお子さんは幼い頃から身近に接していますから理解も早いものです。注射する様子も隠さずに見せておくとよいですね。悩むのは娘さんに対して、保因者であることを告げるタイミングです。娘さんが恋をするとき、結婚するとき、子どもをもつとき、保因者であることで悩む可能性は大きいと思います。しかし、知らずに結婚して、生まれてきた子どもが血友病であったとき、どう思うでしょうか。また、血友病を発症せずとも凝固因子は少なめになるので、娘さん自身が事故にあったときや手術を受けるとき、出産時などは他の人よりもリスクが高くなることを知っておく必要があります。
血友病の遺伝について
コラム遺伝カウンセリングを知っていますか
遺伝性疾患の患者さんやその親族、あるいは遺伝について不安や悩みを抱えている方々を対象として、遺伝カウンセラーを配置していたり、遺伝相談を行っている医療機関があります。 まだまだ数は少ないですが、結婚や妊娠の際に、遺伝について詳しく知りたくなった場合は、主治医や看護師に相談してみてください。