健常な人は体内に細菌やウイルスなどの病原体が侵入(感染)すると、これらを排除する防衛反応が生じます。この反応を担うのが免疫系といいます。
PIDは、生まれつき免疫のはたらきに支障がある病気の総称です。大きくは8つに分類され、細かくは約300種類のタイプに分けられます。そのため原因はいろいろあります。基本的には遺伝性の疾患ですが、家族に同様の症例が現れないという報告も多く見られます(家族の中で1人だけ発症する特発例もあります)。
その理由として、遺伝子が環境に対応するために常に変化していることがあげられます。この変化は紫外線など、体外からの刺激でも起こることが知られています。つまり、遺伝性の疾患であっても、誰もが発症する可能性があります。
遺伝の例としてX染色体(性別を決める情報などが含まれる部分)の場合、母親がX染色体の保因者(発症はしていないが、その要因も持っている人)なら生まれてくる子のうち、男の子は2分の1の確率で発症し、女の子は2分の1の確率で保因者になります。
また、遺伝には劣性遺伝(両親ともに保因者で、どちらからも要因をもらわないと発症しない遺伝形式)があります。常染色体(性別以外の多くの情報を含む部分)劣性遺伝の場合、男の子、女の子にかかわらず4分の1の確率で発症します。
疾患のタイプによって異なりますが、難病情報センターの統計では、およそ1万人に1人の割合で、この病気(PID)をもって生まれるとされています。(難病情報センターホームページ(2019年1月時点)から引用)
PIDのなかでも慢性肉芽腫症(乳児期から全身にこぶができる)とX連鎖無ガンマグロブリン血症(X染色体が関係し、中耳炎などを繰り返す疾患)は人数が多く、それぞれ全国で患者さんは500~1,000人程度いると考えられています。
赤ちゃんは、出生前は母親の胎盤を通して免疫グロブリンG(IgG)が渡されることで免疫力を大人と同等に保っています。しかし、出生直後は免疫グロブリンをつくる力が未発達であり、大人と同様に発達するまで2~6年かかるとされています。
PIDの多くのタイプが、免疫力が大人と同様に発達する前の生後6カ月~2歳ごろに発症することが多く、発症後の症状や期間は、それぞれの疾患のタイプによって異なります。軽症の場合は、きちんと治療を続けることで日常生活を支障なくすごすことができます。一方、重症の場合は、他の疾患を発症する原因になったり、長期の入院が必要となるなど、日常生活に大きな影響を与えることがあります。軽症の場合でも、急に症状が悪化することもあるので、専門医による継続的な治療と経過観察が重要です。
PIDの原因として多いのは、免疫系のはたらきに関係する遺伝子やたんぱく質の欠損です。
免疫系のはたらきが低下し、感染に対する抵抗力が弱まることで細菌やウイルスなどに感染しやすい状態になります。
疾患のタイプによって、起こりやすい感染症は異なり、目にみえる症状としては風邪の症状(咳、鼻水など)がなかなか治らなかったり、発熱を繰り返したりします。ほかに、気管支炎や肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、皮膚の湿疹や下痢などを繰り返します。場合によっては症状が悪化し、入院が必要になることもあります。