HAEの症状
監修:埼友草加病院 腎・透析内科 大澤勲先生
遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema: HAE)では、体のいろいろな場所に突然腫れが起こります。ここでは、HAEの発作が起こる場所、発作が起こったときの症状、症状が生活に及ぼす影響についてご紹介します。
HAEの発作が起こる場所
HAEの発作による腫れは、顔、手、足、お腹、のどなど体のあらゆる場所に、突然かつ繰り返し起こります1)。発作が多く起こる場所は手、足やお腹(消化管)で、9割以上の患者さんが経験しており、顔の発作も7割以上の患者さんが経験しているという報告があります2)。また、命にかかわる可能性もある「のど」の腫れは、起こる頻度は1%程度と少ないものの、患者さんの約半数が経験しているという報告があります2)。
HAEの発作が起こったときの症状
HAEの発作は、身体的ストレスや精神的ストレスが引き金となって起こるといわれていますが、なんの前触れもなく突然起こることもあります1)。
皮膚(顔や手・足)に発作が起こったときの症状
HAEでは手足であれば片側(非対称性)に境界がはっきりしない腫れぼったいむくみが突然あらわれ1)、通常は24時間でピークとなり、数日後には跡形なく消えます3)。また、赤みやかゆみがなく、じんましんをともなわないのが特徴です4)。
お腹(消化管)に発作が起こったときの症状
お腹(消化管)に腫れが起こると、突然お腹が痛くなり、嘔吐、下痢などの症状をともなうこともあります1)。腹痛は軽いときもあれば激しいときもあり、さまざまです1)。
のどに発作が起こったときの症状
のどが腫れると、飲み込みにくくなる、のどに違和感がある、声がかすれる、呼吸が苦しくなるなどの症状が起こります1)。腫れがひどくなって気道がふさがれると、窒息する恐れもあるので非常に危険です3)。症状に気づいたら、急性発作治療薬を処方されている場合はそれを投与し、すぐに救急車を呼びましょう4)。早期発見、早期対応が重要です4)(緊急時に備えようへ)。
HAEの症状が生活に及ぼす影響は?
HAEと生活の質(QOL)について
腫れの発作がどこに、どのくらいの頻度で、どのくらいの強さで起こるのかは、患者さん一人ひとりで異なります1)。約4分の1の患者さんは年に20回以上の発作を経験し、HAEと診断される前の患者さんは発作のために仕事や学校を平均17.5日間(1年あたり)休んでいるという報告があります5)。発作は、のどに起こると窒息する恐れがありますし、急に手がグローブのように腫れたり、お腹が痛くなって嘔吐や下痢が起こったりすれば、日常の生活に影響を及ぼします。
将来的には長期予防薬の登場も期待されるため、それらの使用も含め、どのように「QOL」を保っていくかを、主治医とよく相談することが大切です。
HAEと出産について
多くのHAE患者さんが、妊娠して健康な赤ちゃんを出産しています。しかし、お子さんが50%の確率でHAEの原因遺伝子を持って生まれてくるということも事実です1)(HAEの遺伝についてへ)。また、妊娠がきっかけとなり、発作の頻度が増える人もいます6)。妊娠中は発作が軽くなることもあれば悪化することもあり、第1子と第2子でも同じ症状になるとは限りません6)。陣痛や分娩が発作を誘発することはまれですが、発作が陣痛中または分娩後48時間以内に起こる可能性はあります6)。
妊娠がわかったら、お腹の中の胎児を守る事を見据えた発作時の治療について主治医と相談することが大切です。
1)大澤勲 編:難病 遺伝性血管性浮腫(HAE). 医薬ジャーナル社. 2016.
2)Bork K et al:Am J Med 119(3):267-274, 2006
3)堀内孝彦 他:日本補体学会学会誌 「補体」 57(1):3-22, 2020
4)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 血管性浮腫(非ステロイド性抗炎症薬によらないもの). 令和元年9月改定.
5)Iwamoto K et al:Allergol Int 70(2):235-243, 2021
6)Maurer M et al:Allergy 73(8):1575-1596, 2018
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