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CIDP患者さんと主治医の二人三脚ストーリー

イラスト
Story.4

いつかまた、思い通りに
身体を動かせる日が来ることを信じて。

写真:主治医 永田 栄一郎 先生
永田 栄一郎 先生
東海大学医学部付属病院
脳神経内科 教授
*肩書は取材当時
写真:患者さん 今 斉さん
今 斉さん
病歴8年 
神奈川県座間市在住

若い頃からスポーツに親しみ体力には自信があったのに、
CIDPを発症して身体が思うように動かせなくなり愕然とした今さん。
しかし、すぐに持ち前の負けじ魂が頭をもたげ、
永田先生のもと積極的に治療に取り組み始めます。

元気者を、突然襲った脱力感。

毎日忙しく働きながら、週末は近所の仲間とお神輿を担ぐことを楽しみにしていた今斎(こんひとし)さんに初めて症状があらわれたのは、今から8年ほど前のことでした。「左手の指先に痺れが出たのと、階段を上る時に、なんだか足がだるいっていうか、脱力感みたいなものを感じたんですよね」。そのうち痺れやだるさが次第に強くなっていき、不安になって家族と相談します。まずはMRIを撮ってもらおうという話になり、整形外科を受診しました。

しかしMRIでは原因がわからず、仕方なく別の整形外科を訪ねることに。そこで背中に注射を射ってもらったら、一時的に楽になったといいます。「その時は、良かった!って思ったんですけど、またすぐに元に戻っちゃって」。そこで、最初に診てもらった医師を再び訪ねて相談したところ、「検査しても分からないし、うちではこれ以上やれることもないから」と、東海大学病院を紹介されます。

すぐに受診した今さんでしたが、病気が明らかになるまでには、さらに2年の歳月を要しました。今から8年前といえば、まだCIDPという病気自体が確立されておらず、IVIg治療も広く普及してはいなかった時代だったのです。

希望を見失いかけた日々。

今さんは、CIDPと診断されるまでの2年の間にも、さまざまなつらい思いを経験します。
当時一番困ってたのは、階段の上り下りですね。我が家は2階にリビングルームがあってトイレが1階なんですよ。階段を上れないからトイレに行けない。周りは手伝ってくれようとするんだけど、当時の私はもっと体重があって重かったので、皆んなが私を支えきれないんです。だから自力で上り下りするしかなくて。四つん這いになって、それでも階段の最後の一段が上れなかったり、そんな状態でしたね」。

写真:今 斉さん

今さんは当時、地元の市役所に連絡して「2階にトイレを設置したい」と相談をしました。しかしその時点ではまだ病名すら明らかになっておらず、障害者認定も受けられなかったため市からの援助は得られず、いよいよ途方に暮れてしまったといいます。「その時はもう、『あぁ、これで終わりだな』って思いましたね」。

今さんは、さまざまな検査を受けた後に、筋電図というかなり痛い検査を何度も何度も行なった結果、ようやくCIDPと診断されます。その頃のことを今さんは、「CIDPなんて病名言われても、全然ピンと来なかったですね。周りから『今さん、なんの病気なの?』って聞かれても、日本語名も長くて(慢性炎症性脱髄性多発性神経炎)、覚えられないから答えられなくてね」と回想してくれました。

当時今さんはネットでCIDPを検索し、10万人に1人くらいの病気であることや、神奈川県内の患者数が2桁に過ぎないことを知ります。さらに当時の主治医からは「ある1つの薬が効く患者さんもいれば、効かない患者さんもいる」と言われ、「やっと病名は分かったけど、自分に合う薬は見つかるのだろうか?」と、新たな不安に襲われたといいます。

新しい先生に、期待を寄せて。

やがて今さんを外来で診てくれていた医師が転勤し、永田栄一郎先生が主治医として今さんを診察することになりました。

写真:主治医 永田 栄一郎先生と患者 今 斉さん

今さんは、主治医が代わると聞いた時こう思ったのだそうです。「先生が代わると、見方も変わるかもしれない。それがいい方向に向かえばいいなと思いましたね。見方が変われば、また違う方面からの治療の仕方も生まれるんじゃないかと思ったりして、正直期待しました

一方永田先生は、今さんを診察するのは初めてでも、今さんの存在は既に知っていたといいます。「私たちは常々、カンファレンス等を通じて患者さんの情報を共有していますから、今さんのことは存じ上げていました。何回も入院されていることも、難しい病気であることも分かっていました」。

永田先生は、当時忙しく働いていた今さんの治療目標を、まず「今のまま仕事を続けられること」と定めて治療をスタートさせます。それでも時々再発することがありましたが、そんな時は今さんの方から「入院させてください」と来院されるようになったのだそうです。

写真:主治医 永田 栄一郎先生

今さんはその頃のことを、「当時よくあったのは、歩いていて膝がガクッと折れちゃうこと。膝の裏を押されるとガクッと崩れるのってあるじゃないですか。悪くなるとあれが起こって困ってたんです。そういう意味で自分も、そして家族も、悪くなったら入院した方がいいと思うようになったんですよね」と回想します。

その後、維持療法として1ヶ月に1度の定期的な治療を受けるようになり、今ではある程度症状が安定してきてホッとしていると言う今さんに、永田先生はどんな先生ですか?とお尋ねしてみました。「すごく優しくて、なんとかしてあげたい、っていう気持ちが伝わってくる先生ですね。話していて和むっていうか、自分からは話しやすいですし、何でも聞いてくれて受け入れてくれる感じです。それこそ。先生なんだけど親しくできる。悪い言い方だとタメ口で話せる。だから自分は先生に甘えるっていうか、ああしたいこうしたいっていう話は、ずいぶんしてきたと思いますね
そんな永田先生に、患者さんと向き合うときに心がけていらっしゃることはありますか?とお尋ねすると、こんな答えが返って来ました。「患者さんが病院に来るっていうことは、何か困ってるわけですよね。ひょっとしたらそれは大した病気じゃない可能性もあるんだけど、だけど明らかに、困って来ていらっしゃるわけです。それに対して誠実に応えてあげなければならないということは絶えず思っていますし、何らかの回答を与えてあげるのが医師としての務めだと思っています」。

また皆んなと、神輿を担ぎたい。

つらい時、誰に相談するかっていうと、それはもう家族が一番ですけど」と言いながら今さんは、長年にわたってお神輿を一緒に担いできた仲間たちの存在の大きさについて語ってくれました。「自分は地元の会に入ってるんですけど、地元で神輿を担ぐだけじゃなくて、他所に出かけてって担いだり、他所から地元に来た人たちに担いでもらったりと、いろいろ交流があるんですよ。そんな仲間たちが話を聞いてくれたり、サポートしてくれたりといった支えがあったのは、自分にとってとても大きかったですね。『また一緒に担ごうね』って言ってくれたりね。神輿の友好団体っていうのもあって、そこに車椅子で行ったり、杖ついて行ったりするんですけど、そんなとき両脇を若い者に支えてもらったりもしましたしね」。

もともと今さんは、身体を動かすことが大好きなスポーツマンでした。以前は地元で駅伝の選手として鳴らし、もっと遡れば小中高と野球に明け暮れ、一時はプロを目指したほどのアスリートだったのです。「バリバリにスポーツをやって来た自分が、いきなり原因のわからない病気になっちゃった。何十万人に1人の病気とか言うけど、なんでそれが、よりによって俺なんだよ?!って。それはもう本当に悩んだというか、落ち込みましたね」。さらに話を続けるうちに、今さんの口からこんな言葉が飛び出しました。「自分としたら、走りたいんですよね。今、歩くことは普通の人とそれほど差がなくできてますけど、でもやっぱり、走ることはできないんですよ。昔の、思い通りに体を動かせた時代に戻りたいなって、思いっきり走りたいなって、思いますね」。

そんな今さんの言葉に永田先生は、「そのためにはリハビリも必要だと思いますが、薬がもう少し進化すれば、走ることだって可能だと思いますよ」と応えました。さらに「CIDPは長く時間がかかる病気で、今の治療だと一生付き合っていかなきゃいけない病気です。だけど日進月歩で治療が進化していて、いい薬も出てきています。

例えば10年前だったらよく分からない病気だったのが、次第に確立されてきた。だからあと数年すればさらに進歩するでしょうから、決して諦めなきゃいけない病気ではないと思います。うまくつき合っていけば、それなりに普通の生活はできる病気だと思いますね。落ち込むことは全然ないし、将来やりたいことがやれるようになる可能性は十分ある。今さんだけでなく、私は自分の患者さんにそう伝えています」と力強く語ってくださいました。
スポーツマンらしく、ストレートな言葉を投げかける今さんと、その思いを逃さずキャッチして解釈し、最適な治療という形で投げ返す永田先生。そんなお二人の、二人三脚ならぬ魂のキャッチボールはこれからも、今さんの「神輿を担ぎたい!そして走りたい!」という願いを叶えるために続いていきます。

今 斉さんに学ぶ「あなたの治療のヒント」

CIDPと診断されても、自分に合う薬は必ずあると思うので、諦めないで早く先生に相談すれば、道が開けるんじゃないかなと思います。そして自分で抱え込まないで、家族や友達や同僚に打ち明けるのがいいと思いますね。
今はスマホも普及していますし、ネットで自分の病気を調べればいろんな情報が出てくるじゃないですか。この病気はこの病院が得意だとか、ここにいい先生がいるよ、っていうのが出て来ますから、そこへ行って相談して、自分の病気を診れる先生に早く出会うことができれば、一層早く希望が見えてくるんじゃないかと思いますね。

永田先生からの「ワンポイントアドバイス」

CIDPは、とにかく早く診断してあげることが我々医者にとっては重要なことだと思います。それによって使える薬剤というものがありますし、患者さんのQOLを落とさずに治療することができるようになってきていますから。患者さんは絶対に諦めないで、おかしいと思ったらすぐに病院を受診することですよね。仮にそこの科が該当しなくても、今さんみたいに諦めずに自分の症状を訴え続けて、それを診れるお医者さんを探し当てるというのは重要なことだと思います。
それと、この病気の周知を広く行うのも重要だと思います。他の科の先生がそれを知っていてCIDPを疑うことができれば、我々のところに紹介していただけるわけですから、早く診断できる可能性が高まると思いますので。

(取材日:2021年5月6日)