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  4. CIDP患者さんを支える10人の物語 01 長野/諏訪赤十字病院 看護師 奥原 絵美 さん - CIDPマイライフ 患者さん・ご家族の方向けサイト

※紹介した症例は患者さん個人の発言に基づく臨床症例の一部を紹介したもので、
全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

CIDP患者さんを支える10人の物語

イラスト
01:患者さんに“治療に縛られない生活”を送ってほしいそのためのサポートを続けています

長野/諏訪赤十字病院 看護師
奥原 絵美 さん

雄大な湖のほとりに立つ病院で

 水面が日差しに反射してきらきらと輝いている。この雄大で穏やかな湖に見守られるかのように諏訪赤十字病院は立っている。病棟の窓からこの美しい景色を眺めるだけでも、患者さんの心がどれだけ和むことだろう。

写真:雄大な湖のほとりに立つ諏訪赤十字病院

 看護部の奥原絵美さんは、諏訪出身で諏訪育ち。地元の看護学校を卒業して、諏訪赤十字病院に就職した。今年で入職18年目になるという。「私、諏訪から出たことがないんです」と、はにかむ。その笑顔は爽やかで、諏訪への愛にあふれている。

脳神経内科の患者さんと接して

 奥原さんは、長年の病棟勤務を経て、現在は外来看護を担当している。病棟と外来の両方の経験を通じて感じていることの一つは、「脳神経内科の患者さんは、病気の進行に気持ちがついていけてない場合が多い」ということ。
「現実問題として、昨日までできていたことが今日できなくなっている、ということもあります。症状が進んでいくことを受け止められず、心が置き去りになってしまう。そして、その気持ちのやり場に困っている方が少なくないと思うのです。症状をもちながら、日常生活をどう維持していくか、それを医療スタッフはどう支えていくか、家族には協力してもらえるのか…。患者さんを中心に、ソーシャルワーカーやケアマネージャーさんと連携をとりながら、よりよい方法を一つ一つ探していくことが大切です

入院から在宅医療へのスムーズな移行のために

 奥原さんが初めてCIDPの患者さんに出会ったのは6年ほど前。病棟看護を担当していた頃だった。外来の担当になった現在は、病棟勤務の経験を活かして、患者さんが入院治療から在宅医療へ移行する際のサポートにも力を入れている。

写真:長野/諏訪赤十字病院 看護師 奥原 絵美さん

 退院が決まった患者さんがいると、退院前に病棟へ出向く。そこで病棟看護師の協力を得て、入院中の様子や服薬の状況などを教えてもらうのだ。こうしたきめの細かい引き継ぎは、入院から在宅への治療の移行をスムーズにするだけでなく、患者さんの負担や不安の軽減にもつながる。
 「在宅を希望された患者さんに、ご自身の選択を後悔してほしくないのです。そのために全力でサポートしていきたいと思っています」。

CIDPの患者さんを囲んでの顔合わせ

 そしてもう一つ。入院から在宅への移行を切れ目なく行うための新しい試みとして、諏訪赤十字病院では『多職種による患者さんを囲む顔合わせ』が行われている。
CIDPの患者さんが在宅医療を始めるにあたって、担当医の呼びかけで、医師、臨床工学士(ME)、病棟看護師、外来看護師、薬剤師らが一同に集まって、患者さんと面談する。患者さんの退院後の不安を少しでも解消するために、“このメンバーがサポートしていきます”と挨拶をしあうのだ。
 「病棟を出て外来担当になってからは、他の医療スタッフとの関わりが少なくなっていたので、私にとっても貴重な顔合わせの機会でした。患者さんの不安をチームで共有できたし、各分野の視点から患者さんへのアプローチやアドバイスを聞くことで、外来看護として自分に求められる役割がより明確になりました」と奥原さん。

写真:トラブル対応フロー

また、これを機に、“在宅患者さんのためのトラブル発生時の対応フロー”が作成された。トラブル発生時、患者さんから外来に電話がかかってきたときに、どこに連絡すればよいかが一目でわかるものだ。このフローの共有も大きな副産物であった。

 仕事の上で一番大切にしていることについて奥原さんに尋ねると、
患者さんをサポートしていく中で、“治療中心の生活”を送ってほしくない、という想いがあります。治療に縛られる生活、治療ありきの生活ではなくて、患者さんの“生活の一部、人生の一部に治療がある”と思うのです。そのために私たち医療スタッフがどうサポートしていけるかをいつも考えています」と、力強い言葉が返ってきた。

患者さんの本音を聞き出せる看護師でありたい

本音や不安な気持ちを医師にはなかなか言えない、という患者さんも多い。そこを聞き出すのが看護師の役割の一つでもあると、奥原さんは考えている。

写真:長野/諏訪赤十字病院 看護師 奥原 絵美さん

 「外来診療中、医師と話しているときの患者さんの表情をさりげなく観察しています。少し目が泳いでいるなとか、不安げな顔をしているなと感じたら、診療の後、“先生の話は大丈夫でしたか?”と話しかけるようにしています

 そこで患者さんに心配や不安な気持ちがあれば話を聞くし、医師の話を十分に理解できていないようであれば、医師にフィードバックして後日フォローをお願いすることもあるという。

最後に、看護師をめざした理由を尋ねると、「つきなみですが、幼い頃の祖母の入院がきっかけでした。お見舞いに行ったときに、患者さんに寄り添い、支えていく看護師さんの姿を見て感動し、私もそうなりたいと憧れをもったのです」と照れながら教えてくださった。
まさにいま、その夢を現在進行形で実現していらっしゃる奥原さん。その明るく真摯な姿に励まされる患者さんはどれだけ多いことだろう。

奥原さんが患者さんを支えている諏訪はこんなところです

上諏訪駅の足湯

諏訪は温泉も有名。映画『テルマエ・ロマエⅡ』のロケ地にもなりました、
奥原さんの実家には温泉が内湯として引かれています

写真:上諏訪駅の足湯

諏訪湖豆

シンプルだけど飽きのこない郷土銘菓。奥原さんもオススメです。

写真:諏訪湖豆