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※紹介した症例は患者さん個人の発言に基づく臨床症例の一部を紹介したもので、
全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

CIDP患者さんを支える10人の物語

イラスト
02:退院後の不安を減らし、切れ目のない治療を続けてもらうため

長野/諏訪赤十字病院 薬剤師
五味 裕大 さん

「病棟薬剤師」という仕事

 病院で働く薬剤師の中に『病棟薬剤師』という職種がある。薬を出す調剤室ではなく、医師や看護師と同じように各病棟に配属される薬剤師のことである。主な役割としては、入院患者さんの服薬指導や、医師や看護師との連携、退院時の服薬指導など。そして最近では、患者さんが退院後に通う地域の診療所や保険薬局などへのスムーズな橋渡し役も担うようになってきた。

写真:諏訪赤十字病院外観

 諏訪赤十字病院では、この病棟薬剤師を早くから導入してきたため、患者さんはいつでも病棟にいる薬剤師に薬に関することを気軽に相談できる環境が整っている。五味裕大さんも病棟薬剤師の一人だ。日常的に医師や看護師とチームを組んで、入院患者さんを担当している。「毎日、目の前の患者さんの顔を見ながら、薬の効き方や副作用の有無などを確認しています。調剤室では患者さんとゆっくり接する機会がありませんが、病棟では患者さんのほうから話しかけてもらうことも多く、コミュニケーションの取りやすさを感じています

患者さんとの距離が近いからこそ

 患者さんとの会話から、家での服薬の様子を伺い知ることもできる。たとえば、服薬のタイミングを忘れないように家族にサポートしてもらっている方、ポケット付きのカレンダーにその日に飲む分の薬を入れている方、つい昼の服薬を忘れがちになると漏らす方など、さまざまだ。退院時にはそうした患者さんの習慣や生活スタイルを考慮し、患者さんの目線になってよりきめ細かい服薬アドバイスを心がけている。
 また、「先生の回診のときには言えなかったのだけれど…」と、本音を打ち明けてくれる患者さんもいる。場合によっては、「先生には直接言いにくいので、五味さんから伝えてほしい」と頼まれることもある。薬以外のことで患者さんから頼りにされるのも病棟薬剤師の五味さんならではだろう。

CIDPの難しさがやりがいにつながる

 薬剤師の立場から、CIDPの患者さんの治療の難しさは二つあると五味さん。
 一つ目は、免疫を下げる治療を行わなければならないため、風邪などの感染症に罹りやすくなる可能性があること。そのためマスクの着用やこまめな手洗いの徹底が不可欠だ。

写真:長野/諏訪赤十字病院 薬剤師 五味 裕大さん

 二つ目は、手や指先の麻痺をもつ方が多いこと。CIDP以外の薬も服薬している患者さんがほとんどのため、1回分の薬を一包にまとめて服用しやすいように工夫しているが、その袋を開けるのが困難な方も多い。そのため、患者さんが薬をからだに取り込むまでの全工程をフォローする『服薬支援』が重要になる。その工夫や改善策を考えて、患者さんに提案することも五味さんの役割の一つであり、やりがいにもなっている。

地域の保険薬局との連携

 CIDPの患者さんが入院から在宅医療に移行する際、今後どこの薬局で薬を受け取るかを患者さんと事前に相談する。自宅が遠い場合、利便性を考慮して自宅近くの保険薬局を希望される方も多い。しかしながら、地域の保険薬局ではCIDPの治療薬はほとんど取り扱いがないのが現状。そこで病院薬剤師の出番となる。
 「患者さんが希望される薬局に電話して、患者さんの状況や使用中の薬剤についてお伝えし、退院後の服薬指導をお願いできるかをお伺いします。珍しい病気なので保険薬局の方は最初戸惑われますが、何度かやりとりを重ねていくうちに理解してくださり、最終的には快く引き受けてくださいます
 このとき、五味さんが電話でのやりとりと並行して活用したのが『薬剤管理サマリー』だ。地域の医療連携を促すために、日本病院薬剤師会が推奨している定形の用紙である。

『薬剤管理サマリー』の活用

 記入項目には、患者さんの既往歴、入院中の服薬状況、入院時の持参薬、退院時の処方などがあり、これを介して病院薬剤師と地域の保険薬局が必要な情報を共有することができる。
「病院と近所のかかりつけ医の間で患者さんを紹介する際に、いわゆる『紹介状』という書類があるが、『薬剤管理サマリー』は簡単に言えばその薬剤師版というイメージでしょうか。“入院から外来や在宅への切れ目のない服薬指導”をめざす上でとても有効です。退院される患者さんはうれしい反面、不安も多いと思います。その不安を一つでも多く解消して安心して治療を続けていただくためにサポートしていきたいと考えています」

患者さんにあきらめないでほしいから

 五味さんは地元・諏訪の出身だ。高校生のときから、「将来は地元に貢献できる仕事に就きたい」と考えていた。得意だった化学を生かして他県の薬学部へ進学。卒業して薬剤師免許を取得し、地域の基幹病院である諏訪赤十字病院にいわゆる“Uターン就職”を決めた。

写真:長野/諏訪赤十字病院 薬剤師 五味 裕大さん

 「実は、この病院で働くために薬剤師になったと言ってもいいくらいここで働きたかったのです。いま、その夢が叶っています」と、ちょっと誇らしそうに教えてくれた。
 最後に五味さんに、CIDPの患者さんに伝えたいことを尋ねてみた。
 「耳慣れない病名に戸惑われる方も多いと思いますし、診断を受け入れてすぐに治療を始めることも難しいかもしれません。でも、いまは新しい治療法が開発され、ご自身のライフスタイルにあった治療法を選ぶことができます。病院には、医師、看護師、薬剤師をはじめ、さまざまなスタッフがいて、患者さんを一緒にサポートする体制があります。ですから一人で抱え込まず、あきらめずに、私たちに相談してください
 実際に五味さんは、CIDPの患者さんが、適切な治療によって社会復帰を叶えた様子を目にしてきた。だからこその、説得力のある言葉だった。

五味さんが患者さんを支えている諏訪はこんなところです

1周16kmの
諏訪湖ジョギングコース

弾性ゴムチップ舗装でランナーにやさしく、景色も美しい。

写真:1周16kmの諏訪湖ジョギングコース

みそ天丼

信州といえば、蕎麦。だけど、こちらも地元の食材を活かして美味しい。

写真:みそ天丼