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※紹介した症例は患者さん個人の発言に基づく臨床症例の一部を紹介したもので、
全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

CIDP患者さんを支える10人の物語

イラスト
03:患者さんの声に、患者さんの身になって耳を傾けるそこからサポートがはじまると信じています

徳島県/徳島大学病院 看護師
中村 順子 さん

水と太陽の都にある大学病院

 四国の東側に位置する徳島県。その県庁所在地である徳島市に、徳島大学病院はある。“四国三郎”という愛称で親しまれる一級河川・吉野川をはじめ、市内には130以上もの河川が流れている。まさに水の都だ。また、徳島市は日照時間が長く、年間を通じて気候も温暖。そうした自然環境に恵まれた地で、徳島大学病院は先進的な医療を提供している。県内だけでなく、淡路島や神戸などから来院される患者さんも多くおられるというのも納得だ。
 看護師の中村順子さんは、結婚を機に出身地の広島から徳島へ移り住んできた。
「徳島市に来て12年になります。自然豊かで住み心地がよく、とても気に入っています」と、爽やかな笑顔で教えてくれた。

より高度な医療を学ぶために

 中村さんの所属は看護部の内科外来。内科外来とひと口に言っても、その中には脳神経内科をはじめ7つの診療科と1つの診療部が含まれている。それら診療科の検査や診察介助、注射、指導、救急車の受け入れ、治験への協力など、業務内容は多岐にわたり、守備範囲はとても広い。
 「最初は市内の別の病院に勤務していたのですが、母が病気になり大学病院で大変お世話になり、より高度な医療に携わりたいと思い、8年前に徳島大学病院に転職しました。日々いろいろなことを吸収できるので、毎日がとても充実しています」と目を輝かせる。

患者さんに安心感をもっていただくために

 内科外来の処置室も中村さんの担当の一つだ。処置室には、CIDPの患者さんが定期的に通院してくる。
 個人差はあるが、CIDPの維持療法で免疫グロブリン点滴の方は3週間に1回、皮下注射の方は週1回のペースで定期的に来院されることが多い。
 「来院頻度が高いので、お互い顔なじみになるのが早いですね。とても良いコミュニケーションが取れていると思っています。患者さんがご自宅で困っていることやプライベートな話を聴かせてくださると、ああ、私たちに心を開いてくださっているのだな、と嬉しくなります」

 処置室は3〜4名の看護師が交代制で担当している。担当者間で必ず行うことは、“その日の患者さんの様子の情報共有”だ。

写真:徳島県/徳島大学病院 看護師 中村 順子 さん

症状の変化や患者さんとの会話の中で気になったことなど記録し、共有する。これによって患者さんは、前回と違う看護師が担当になっても安心して処置を受けることができる。また新しい薬剤が導入された時や人事異動で新しいスタッフが増えた時は勉強会を開催し、新しい知識を共有、患者さんが安心して治療を受けることができるよう努めている。
 薬剤独自のマニュアル作成や、処置室での練習を終え在宅移行された患者さんが必要な物品を取りに来られた際にお待たせしないよう、患者さん別の物品リストを作成したのもその一貫だ。今後は、筋力低下が進みご自身で大量の物品を持ち帰ることが難しい患者さんに対して、ご自宅に郵送できるシステムの構築が課題だ。
 こうした表には見えない活動が、病院と患者さんとの信頼関係を深めているのだろう。

変化していく状況にタイムリーに寄り添っていく

 CIDP治療の難しさの一つは、「変化していく状況」にある。CIDPの患者さんに向き合いながら、中村さんは日々それを体感していると言う。
「その日の患者さん指導がゴールではないのです。病状の進行や加齢によって、いままでできていたことができなくなることがあります。また、白内障や糖尿病など、他の病気が加わってくることもある。患者さんを取り巻く状況は刻々と変化しています。そこに、どれだけタイムリーに寄り添っていけるか。状況によっては、ご家族の方にお手伝いをお願いしたり、訪問看護を利用して定期的な関わりをもつこともあります。状況の変化をすみやかに把握して、その方に一番あったサポート方法を、長期的な目線で検討していく。それも看護師の大切な役割だと思っています」

 そして、そのためには、ご家族に協力を仰ぐことも大切だと中村さん。
「患者さんにとってご家族は一番身近な存在ですし、長い時間を一緒に過ごされています。医師や看護師には言いにくい本音や心身の変化も、ご家族の前ではふと漏らすことがあると思います。ですから、ご家族から見て気づいた変化や気になった出来事などがあったら、遠慮せずぜひ私たちに教えていただきたいのです」

『傾聴』から患者さんの気持ちを和らげていきたい

 仕事の中で一番心がけていることは?と中村さんに尋ねると、「傾聴です。患者さんのお話を聴くことを大切にしています」と、すぐに答えが返ってきた。

写真:徳島県/徳島大学病院 看護師 中村 順子 さん

 患者さんはどうしても病気への不安やストレスを溜めてしまいがち。医師に聞きにくいことや、家族に話しにくいこともあるだろう。
 「そうした小さなお悩みを私たち看護師が汲み取って話を聞くことで、気持ちを和らげることができればと思っています。ですから、患者さんには積極的にお声をかけますし、忙しくてもなるべく患者さんのお話を聴くように心がけています」
 看護師は、医療スタッフの中でも患者さんとの距離が一番近い存在と言えるだろう。だからこそできることがたくさんある、と中村さん。

幼少期の病気をきっかけに看護師の道へ

 中村さんが看護師という仕事に最初に興味をもったのは、6歳の時ペルテス病という病気になったことがきっかけだ。ペルテス病とは大腿骨の血流が途絶え、壊死してしまう病気で、1年半長下肢装具をつけ松葉杖での生活を強いられた。遊びたい、走り回りたい時期の運動制限はとても辛かったが、受診の度に親切に優しく対応してくれる看護師さんに救われた。その後、13歳の時にスポーツ外傷で入院、手術を経験し、看護師への想いがさらに強まり、現在の仕事につながっているのだという。
 そして、中村さんはプライベートでは11歳と4歳の娘をもつ二児の母だ。実は、その娘さんの将来の夢も、“看護師”なのだという。
 「娘が4年生のとき、学校行事で『二分の一成人式』のお祝いがあって、その記念で書いた文章に、『将来の夢は看護師さん』と書いていたのです。そんなふうに考えていたなんて全然知らなかったので、本当にびっくりしました。娘がそう思った理由はよくわかりません(笑)。でも多少は私の影響もあるのかなと思います。少し照れくさいけれど、娘に私の仕事を認めてもらったような気がして、うれしいですね」

これからも、大学病院という場でさまざまな経験を積んで、看護師としてさらにスキルアップしていきたい。そして、その学びを患者さんに還元していきたいと話す中村さん。周囲の人まで明るく照らす笑顔と、看護師としてのプロ意識の高さがとても印象的だった。

中村さんが患者さんを支えている徳島はこんなところです

滝のやき餅

その昔、徳島城の築城祝いに献上されたという「やき餅」。
職人さんによる手作り製法で素朴な美味しさが人気の銘菓。

写真:滝のやき餅

眉山ロープウェイ

徳島市のシンボルであり、パワースポットとしても知られる眉山。山頂からの景色の美しさは万葉集にも詠まれているほど。ロープウェイで片道6分の空の旅を楽しめる。

写真:眉山ロープウェイ

阿波おどり

徳島といえば「阿波おどり」も有名。阿波おどり会館の前には、編み笠をモチーフにしたユニークな形の休憩所がある。

写真:編み笠をモチーフにしたユニークな形の休憩所